
まさかのゴシップ的リークから2日。
本当にリリースされた、D'Angeloの新作アルバム「Black Messiah」。
現在はiTunes Storeで先行発売、フィジカルのCDアルバムは12月23日リリース予定となりました。
Amazonやその他店舗でももちろん流通を開始します。
そんなわけで、とりあえずiTunes Storeにてアルバムを購入しました。
前作「VooDoo」が発売された2000年、まさか14年後にこのような世界になっているとは、これっぽっちも思っていなかったような気がします。
=トラックリスト=
1. Ain't That Easy
2. 1000 Deaths
3. The Charade
4. Sugah Daddy
5. Really Love
6. Back To the Future (Part I)
7. Til It's Done (Tutu)
8. Prayer
9. Betray My Heart
10. The Door
11. Back To the Future (Part II)
12. Another Life
=
全12曲収録となっております。
今回は、どうやらVooDoo当時のミュージシャン・アーティスト仲間で結成された「Soulqualiens」周辺の人物の関わりはそう大きな比重を占めてはいないようです。
が、アーティスト名を「D'Angelo & The Vanguard」と銘打っているだけあって、全編完全な生音志向。
ある意味、前作を踏襲した路線といっても過言ではありません。実際、 「1000 Deaths」や「Really Love」といった、VooDoo以降にゴシップ的に世間を賑わせていたD'Angeloのゴシップ音源がタイトル据え置きで収録されいたりしますし。
まあ逆に言うと、14年間なにやってたんだ、と。
(現在 4曲目「Sugah Daddy」までリスニングしながら書いています)
時代がVooDooから一旦離れ、また戻って来る時期をただただ待っていただけのような気すら起きてしまいます。
例えば、1stアルバム「Brown Sugar」は、当時のヒップホップ、ギャングスタラップ隆盛のさなかに、敢えてジャジー・ソウルというヴォーカルミュージックをぶつけてくるという挑戦をしていました。
そして2作目「VooDoo」。打ち込みR&Bがメインストリームとなっている中での、土臭いファンクネスをこれでもかという密度でぶつけてきた実験作。
この2作までは、完全に時代の流れを受け入れつつ、カウンターカルチャー気味に独自の新しい世界を切り拓いている意欲を感じました。
ただ…今作は、その時代を論ずるカルチャーな部分をなかなか感じられません。
まだ聴き込み方が足りないだけと思えば、それだけなのかもしれません。
もしかしたら、音楽業界自体が「カルチャー」に価するようなムーブメントを生成できていないのかもしれません。いや、それは大いに原因のひとつに挙げられるでしょう。
もちろん、リークされた当時の「Really Love」が柳眉な音質となって聞けるようになっていることは喜ぶべき事実です。
14年経っても、衰えを感じさせないD'Angeloのファルセットボイスに感謝を述べたいのも事実です。
聞きながら、少しずつ考察を始めました。
先ほどの「カウンターカルチャー」というサブストリーム独特の空気感は、かつてのヒップホップが持っていた流儀であり、エッジーな感覚というものがあったのはサブストリームであったからこそ。
その辺りの綱渡り的センスは、この2014年という時節のブラック・ミュージックに求めるのはあまりに酷なことでしょうか。
そういった意味では、このD'Angeloの作品は、敢えて14年の歳月を感じさせることで、ブラック・ミュージックを回帰させる、または回帰させようとする意味を強く持っているのかと思います。
なるほど、M6「Back To the Future (Part I)」やM11「Back To the Future (Part II)」の2曲が、皮肉ともとれるようなタイトルであることで感じることができました。
そこで!
アルバムタイトルの「Black Messiah」、”黒い救世主”に辿り着きました!
なるほど!
救世主であり、解放者。
VooDooでは、アフリカ賛歌により、ソウルミュージックの原点回帰を唱えました。
今度は、ブラック・ミュージック全体を原点(D'Angeloの考察による)に回帰するために、ソウルミュージックを唱えているということでしょう。
Vanguardの意味は、「先駆者、前衛、指導的地位」と日本語に訳せます。
ここまでくれば、もうD'Angelo様の意図がひしひしと伝わってきます。ここまでブラック・ミュージックの事を思いやり、思いやられているアーティストは他に類をみないと思います。
聴きながら、評価が180度変わってしまいましたが、逆に言えばこの時勢に、こんな異端な音楽をリリースすることに踏み切ったレコードレーベルも偉いと思いました。
VooDooで音楽界を変えた男が、救世主となって再び世界を元に戻す。
これほど美しいストーリーが他にあるでしょうか?
ここ最近では一番の快進撃だったDaft Punkの「Random Access Memories」も、音楽界を奮起させる役割を大いに担っていたと思っていますが、D'Angeloからのこの身体を張った14年間の沈黙後のアルバムリリース、どこまで”世界”に響くのでしょうか。

今見ても圧巻なSoulqueliensメンバー!
D'Angelo、万歳!
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